「戦わずして人の兵を屈する」

ご無沙汰しておりました。

修士論文の執筆に当って、連載特集として「孫子兵法」を取り上げます。

二千年の普遍性は、現代にも通用する原則。

私も中国は大嫌いですが、

まあ、「敵を知り己を知れば百戦危うからず」

孫子が述べるように、

敵の戦略というのを学んでみましょう。



以下浅野裕一孫子』による。 

 孫子兵法では、実際の戦闘行動における戦術の他に、平時、戦時における諜報活動、工作活動、宣伝活動の必要性を説いている。現代においても、諸国の国家実行としてこれらの活動が行われている。では国家は何故こういった諜報活動、工作活動、宣伝活動を行うのか。戦術学の原点とも言えるこの孫子兵法から、その理由を検討してみたい。



第三章謀攻編

第九段「戦わずして人の兵を屈する」

孫子は言う。およそ軍事力を運用する原則としては、敵国を保全したまま勝利するのが最上の策であり、敵国を撃破して勝つのは次善の策であり、敵の軍団を保全したまま勝利するのが最善の策であり、敵の軍団を撃破して勝つのは次善の策であり、敵の旅団を保全して勝利するのが最上の策であり、敵の旅団を撃破して勝つのは次善の策であり、敵の大隊を保全して勝利するのが最上の策であり、敵の大隊を撃破して勝つのは次善の策であり、敵の小隊を保全して勝利するのは最上の策であり、敵の小隊を撃破して勝つのは次善の策である。従って百たび戦闘して百たび勝利を収めるのは、最善の方策ではない。実際に戦闘せずに敵の軍事力を屈服させることこそ、最善の方策である。」



この段で第一に述べられているのは、「戦争」とは実際の戦闘によって勝利するのが最善の方法なのではないということである。


百戦百勝することは、実際の戦闘行動においては最も重要なことであるが、それには必ず自軍の消耗及び損害が付随し、その多大な経済的損失の上で戦争目的を達成したとしても、得られた利益と比較した場合、損失のほうが大きい場合もある。


また、敵国領土の獲得が戦争目的であった場合、長期の戦闘行動により当該領土が焦土化し、自国にとっての戦略的利益が消失するということも考えられる。


そして、敵国軍を保全したまま勝利したならば、その兵力を自軍に編入する事により、自軍を更に強大化し、さらなる国益の追求を行うことができる。


その為、実際の戦闘行動を行わず、様々な謀略活動を実行し、敵国の軍事力を沈黙させることが最も良い方法であり、完全な勝利なのである。従ってこの段で述べられたのは自国から敵国に向けての謀略活動の必要性を説いたものである。


 
スイス政府編「民間防衛」にも同様の記述がある。



「敵は同調者を求めている」

「ヨーロッパ征服を夢みる、ある国家の元首が、小さなスイスを武器で従わせるのは無駄だと判断することは、だれにも納得できる話である。単なる宣伝の力だけでスイスをいわゆる「新秩序」の下に置くことができると思われるときに、少しばかりの成果をあげるために軍隊を動かしてみたところで、何の役に立つだろうか。


国を内部から崩壊させるための活動は、スパイと新秩序のイデオロギーを信奉する者の秘密地下組織をつくることから始まる。この地下組織は、最も活動的で、かつ、危険なメンバーを、国の政治上層部に潜り込ませるようとするのである。彼らの餌食となって利用される「革新者」や「進歩主義者」なるものは、新しいものを待つ構えだけはあるが社会生活の具体的問題の解決には不慣れな知識階級の中から、目をつけられて引き入れられることが、よくあるもんだということを忘れてはならない。


数多くの組織が、巧みに偽装して、社会的進歩とか、正義、すべての人人の福祉の追求、平和という口実のもとに、いわゆる「新秩序」の思想を少しずつ宣伝していく。この「新秩序」は、すべての社会的不平等に終止符を打つとか、世界を地上の楽園に変えるとか、文化的な仕事を重んじるとか、知識階級の耳に入りやすい美辞麗句を用いて・・・・・。

不満な者、欺かれた者、弱い者、理解されない者、落伍した者、こういう人たちは、すべて、このような美しいことばが気に入るに違いない。ジャーナリスト、作家、教授たちを引き入れることは、秘密組織にとって重要なことである。彼らの言動は、せっかちに黄金時代を夢見る青年たちに対して、特に効果的であり、影響力が強いから。
また、これらのインテリたちは、ほんとうに非合法な激しい活動はすべて避けるから、ますます多くの同調者を引きつけるに違いない。彼らの活動は、”表現の自由”の名のもとに行われるのだ。」



これを我が国の実情に当てはめてみればどうか。


日米安全保障条約締結反対運動に始まった共産主義的非合法活動から現代に至るいわゆる「市民活動」「平和活動」など、これらの活動がもたらす結果が誰を、あるいはどの国家の利益になるかを検討すれば、その活動の意図は明白なものとなるであろう。



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